5/22生物多様性の日に、化粧品産業との関りを再チェック
前身のサイトbeaute d’Orから、化粧品と生物多様性の関りについて注目してきましたが、ここにきて、改めていま生物多様性が大注目されています。
なぜ注目されているかというと、近年「気候変動」が地球規模で達成しなければならない一番大きな課題であり、その気候変動とセットに、生物多様性の保全の必要性が叫ばれているからです。また、2021年は「国連生態系回復の年」といわれ、グローバルでそれに向けた様々な提言が出されています。日本国内では、2030年までに陸と海の生物多様性保全を30%達成するという、民間を巻き込んだ有志連合「30by30」アライアンスを4月に発足し、生物多様性の世界目標達成を目指しています。
おさらいですが、生物多様性とは地球上の生物がバラエティに富んでいること、またそれらが相互に複雑に生態系としてかかわっていることを示す言葉。
サステナビリティを考える上でも非常に重要なテーマの一つでしたね。
化粧品では少し遠いイメージを持たれるかもしれません。加工食品や日用品などもそうですが、化粧品は商品から原料を連想しにくい・・・
化粧品製造には、動物由来原料・植物由来原料がたくさん使われます。動物・海洋生物からのコラーゲンにしかり、植物エキスなどに用いる薬草やアロマや海藻、またパッケージに採用するプラスチック樹脂原料などなど。化粧品ひとつ作るのに、様々な原料が使われています。
生物多様性という概念では、ある種だけが増加・減少してもよいということではなく、様々な種がバランスよく存在しなければ、その周辺の環境も死んでしまいます。その周辺の環境とは、その動物たちの食料になる植物やその他の動物です。野生生物の世界では廃棄物という概念はなく、動物の死骸ですら、他の生物の肥やしになります。このような自然循環が、人間の産業のために無作為に採取・採集され続けてきたことによって絶妙なバランスが大きく崩れ、絶滅危惧種というものが生まれます。絶滅危惧種が増えることで、さらなる環境破壊も起こります。また、気候変動から環境破壊が起こって動植物が住むことができなくなり、絶滅危惧種を生むということもあります。そのため、気候変動と生物多様性はセットに考えなければならないということが生まれたわけですが、
このような生物多様性を考えながら、製品を使う・選ぶことはサステナビリティに繋がります。それは、化粧品であっても対応しなければなりません。
生物多様性に配慮した商品を選ぶにはまず、化粧品がどのようにつくられるのかを考える必要があります。読者の皆さん(一般生活者)化粧品に使われている原料にどのようなものが使われているかは、商品の裏面やパッケージなどに記載されいている全成分表示を見ます。全成分表示には専門用語が多くあってわかりにくく、表示を見ても原料がイメージしにくいものばかりです。全成分表示以外にも、パッケージなどに記載されている認証から判断できるものもあります。気になる成分や認証があったら、ご自身で調べてみたり、メーカーに問い合わせることをお勧めします。
生物多様性への配慮で一番大切なのが、(これはどの業界でもいえることですが)
・絶滅危惧種に指定されている原料を使用していないか
・無作為に採取・採集したことで環境破壊を起こしていないか です。
絶滅危惧種に何が指定されているかは、ワシントン条約に記載の野生生物(動植物リスト)を確認します。また、絶滅危惧種以外でも、持続可能な産業ができているかどうかも見る必要があります。特に環境破壊が深刻な品目について(大豆・カカオ・パーム油・紙・パルプなど)は、きちんとチェックする必要があります。例えばパーム油は、化粧品の場合だと、石鹸やクリームなどの原料になっています。輸入品は特に、ブランドサイトやパンフレットなどで原料を確認してください。これには、野生生物の不法取引が海外でよく行われているからです。
原料の面では、他業界などで破棄されていたものを原料にする「アップサイクル原料」がありますが、これはまた別の機会にお伝えします。
原料からエキス・美容有効成分を抽出して原料を加工しますが、その加工工程や調合後に実際化粧品として製造されて完成するまでは、その加工工場・製造工場において、温室効果ガス削減につとめることはいうまでもありませんが、工業排水がその周辺地域の環境破壊を起こしていないか、その周辺に住む生物を脅かしていないか注意しなければなりません。

一般生活者の方が化粧品を手に取るのは、小売店から。環境配慮や生物多様性の視点で商品を選び、使用後は廃棄することになりますが、その廃棄方法が残念ながらいまは暗中模索状態。リサイクルマークがたくさんついているのに、食品や飲料などとは違い、なぜか化粧品だとそのまま可燃ごみに捨てていませんか?確かに、食品や飲料ほど廃棄する機会は少ないと思いますが、日用品同様、化粧品もこのようなマークに従って適切に廃棄しなければなりません。適切は廃棄方法については、メーカー/購入した店舗、お住まいの地域のゴミ処理センターなどへ問い合わせてみるのも良いでしょう。また、メーカーや店舗などで行っている容器回収に積極的に参加してみましょう。

(出典:御坊市HPより抜粋)
では、実際どのように廃棄するか ―
一般的に、化粧品の外箱は「紙」ですので、段ボールを出せる資源の日にまとめて出せます。
容器は、プラスチックならプラスチックの日(自治体によって異なるのでよく確認)、ガラスなら資源の日、商品を包んであるフィルムもプラなのでプラスチックの日に捨てます。キャップやノズル、スポイト、スパチュラなどは、記載の通り分別しましょう。
また、最近よく目にする「バイオマスプラスチック」の場合は、かならずメーカーに問い合わせて適切な廃棄方法を聞きましょう。(バイオマスプラスチックは、バイオマス比率(配合量)や堆肥化*方法がものによって全く異なります。同時に、メーカーも知らなくてはならないのですが。) *堆肥化・・・ゆっくり自然分解して土に還ること
プラスチック問題への解決は、どの業界も一番やりやすい施策のひとつで、特にこのバイオマスプラスチックはこの一年で非常にホットなトピックスに。4月に施行された「プラスチック循環促進法」によって、さらに勢いを増しています。
(プラスチックの話は、以前コラムで述べたものも是非ご参考に★)
従来のプラスチックよりはまだバイオマスのほうが良いですが、正しく廃棄されているかが一番の問題です。また、まだ価格も高く、バイオマスに変えたことにより商品価格があがることも想定されます。海洋プラスチック問題は、廃プラが海に流れ出てそれが時間をかけてマイクロプラスチックとなり、それを魚が自然と飲み込んでしまい死に至るなどで絶滅危惧種が増えています。「バイオマスプラスチックがマイクロプラスチックになって魚が飲み込んでも、従来のものよりは安全」というのはまだ地球上の誰にもわからないのですが、燃やせばCO2も排出されます。また、バイオマスプラスチックが大注目されたことで、その原料の過度な栽培や野生原料の採集が行われないかどうか、危惧しています。一番一般的なのがサトウキビ由来です。さとうきびは、国産では沖縄県を中心に、それ以外はアメリカやブラジルなどからの輸入に頼っています。最近は、さとうきび以外にもヒノキなどの植物樹脂も出てきています。
また以前も述べたように、化粧品の場合は、高分子ポリマーなど成分中にプラスチックが配合されている場合もあります。スクラブやUVクリームなどです。これが自然と海に流れ出て、マイクロプラスチックとなってしまいます。今ではだいぶ少なくなってきましたが、ハワイのある浜辺では、こういった成分の入ったUVクリームの使用が禁じられているほどです。
化粧品のプラスチック問題は、単に容器や包装だけでなく、成分中にまで細かく見る必要があります。
全体を通して、企業と一般生活者が協力し、化粧品の生物多様性への配慮を達成していく必要がありますね。是非できるところからトライしてみてください!
まとめ:化粧品の生物多様性への配慮とは?
●生物多様性とは、地球上の生物がバラエティに富んでいること。またそれらが相互に複雑に生態系としてかかわっていることを示す言葉
●生物多様性は、気候変動とセットに考えなければならない
●使われている化粧品原料が、生物多様性に配慮した原料であるかを全成分表示や認証、その他サイトやパンフレットなどを見て確認するし、ワシントン条約や持続可能な生産に配慮している企業・ブランドを選ぶ
●原料加工や工場での製造において、工業排水にまで配慮している企業やブランドを選ぶ
●商品使用後の廃棄について:①容器回収キャンペーンに参加してみる ②外箱や容器に記載されているリサイクルマークやその他表示をみて、自治体に合った廃棄方法で廃棄する ③バイオマスプラスチックの場合は、廃棄方法が異なるので、かならずメーカーに確認する
●化粧品のプラスチック問題は、容器や包装だけではなく、成分中に高分子ポリマーなどプラスチック原料が配合されていないものを選ぶ
●企業と、購入~廃棄まで行う生活者が協力して、化粧品の生物多様性達成に向けて動かなければならない
>生物多様性についてもっと詳しく知りたい方はコチラをDLしてください(出典:環境省)
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